• Twitter
  • Instagram
  • Facebook

アガサス・ビィ 和歌山タウン情報アガサス・ビィ
最新号のPDFはこちら

FOLLOW US ON

|PERSON

第4回「オリジナルブレンドを組む上で考えること」/もくれん村上さんと珈琲の話をしよう。

  • この記事をツイート
  • この記事をFacebookでシェア
  • この記事をLINEに投稿
第4回「オリジナルブレンドを組む上で考えること」/もくれん村上さんと珈琲の話をしよう。

――ここ2年くらいで、和歌山県内でも自家焙煎のコーヒーショップが増えています。ちょっとしたブームになっていると思いますが、どんな印象をお持ちですか?

 

村上(以下、省略)
むっちゃ面白いと思っています。僕、昨年入院しているんですが、そのくらいから焙煎についていろいろ考えていました。そこで退院後に、僕が行ったことがなかったお店に珈琲を飲みに行きました。

新しく開店した人たちの珈琲へのアプローチは面白くて。そこからすると、僕のやっていることは古いんだろうなと。僕が珈琲に携わり始めた時は、まだ上の世代の人たちがいた。彼らからすると、僕も新しい世代だったんだろうけど、なんとなく、自分でも前の世代の方法を引きずっている。

そういうところだけじゃなく、新しい人たちの、味の作り方や焙煎方法などの感覚は違うと思って。その珈琲を飲んだ時に、「なんかすごいな」「これってどうなっているんやろう?」と感じました。

その時に「ああ、やっぱり珈琲って面白いな」と。自分も「珈琲って面白いよ」と人にはよく伝えますけど、自分が新しい面白みに入って行ったのは、他店の珈琲を楽しみ始めた昨年かもしれない。

もちろん自分が珈琲を納品しているお店にも飲みに行きます。自分の珈琲だけど、淹れる人が違うから、面白いんです。珈琲をお客さんの前に出した時点で、そこのお店のものだから、出してくれた時に「ああ、なるほど」と思う。だから自分の発見にもつながっています。

 

――今、もくれんさんが珈琲を納品している店舗数は?

10店舗くらいかな?

 

――もっとあると思っていました。

よく言われます(笑)。1215くらい? それくらいですよ。ただ、ウチは個人用と業務用を分けていない。個人も業務も同じ豆を買ってもらっています。もちろんブレンドの相談は受けていますよ。

 

――オリジナルブレンドを製作する時はどのように考えていますか?

依頼者が考えているお店で出したい味のイメージを聞いて、ブレンドを組むパターンが1つ。もう1つは、僕が抱いている店のイメージを元に組んだブレンドを試してもらうケース。1種類だけを出す店もあれば、3種類くらいから決めてもらう場合もあります。

その時は「豆を一度、現場に持って行って、自分が淹れる場所で、現場で同じような気持ちで使ってもらっていいですか」とお願いします。ウチの店で飲んでもらって「これがいいです」といわれても困るんですよ。そこで感触が良ければ、そのまま決まることもあります。

イメージがわからない店には実際に足を運びます。その時に自分が想定して作ったブレンドと違った印象だと組み直します。

豆の配合と、その配合した豆の挽き具合によっても味は変わるし、どのくらいの量を使うかによっても味は変わる。どんな水を使うかでも、どのような抽出方法で淹れるかでも味は違う。最後にお客さんへの提供の方法によっても味は異なります。

自分の店で淹れているもくれんブレンドを他店で淹れるとすると、そのお店がウチと違う水を使っていると、当然、味は違います。逆に依頼者の店で使っている水を飲んで、「こんなブレンドがいいかも」とイメージすることもあります。

 

――僕はMsCAFE(和歌山市十二番丁)のブレンドが好きなんですが、ある取材の際、それがもくれんさんの豆だと知ったんです。

(過去のMsCAFEにて)

MsCAFE店主の本山さんの場合は、指導期間が2年間と最初から決まっていました。ギャラリーカフェのことなどを聞いた上で本山くん、ウチの店の方針は、普段の流れや動きの中で発見して、珈琲のことや『珈琲を淹れることってこんなんだな』と身につけていくことを重視したい。人によっては4年の修行が必要かもしれないし、10年かもしれない。ギャラリーでカフェをするんでしょ?」


「そうです」

「いつするの?」

「2年後を考えていて…」

「じゃあ、さっきみたいな方法と2年でコツだけ学ぶ方法どちらがいい?」

「では2年でお願いします」と(笑)。なので、彼には要点をかい摘まんで伝えている部分があります。そういう中で、自分の動きの中でというのも1つのポイントです。そこだけに集中して、2年間取り組んでもらった。結果的には、それが良かったと思っています。

 

――「動きの中で」というのは、具体的に何か例を挙げると?















例えば、時間の話。珈琲にお湯を注ぐ際、いくら時間を正確に揃えても、その時どきで、味は変わります。時間という概念は、自分の外側の話。僕は、自分の外側で流れている空気の流れが「時間という数字」になっているものだと思いますが、それって自分の中の動きを示すリズムとは違う。この時間になったから次の動作に入るということと、実際に珈琲を見た時にどのような状態になっているか、ということは違います。

だから、外側の時間の流れの方に合わせてお湯を注ぐと、目の前で起こっている珈琲の反応が準備できていないままで、次の動作に入っちゃうことが結構あります。数字で判断するのではなく、珈琲を淹れる動作の流れのなかで、体内で刻むリズムを頼りに、珈琲の反応を見て判断する方がいいと思うよ」ということを本山くんに話したことはありました。

その時は、なんとなくそういう風に伝えていました。後々、決まりごとをやっていると気が付くことがあるし、そうじゃなくても気が付くことはたくさんある、というのはありますよね。

 

――他店からのオリジナルブレンドの相談、提供はいつ頃からされていますか?

開店6年目くらいからですね。ご存知だと思うけど、ハミングバードさん。あそこが初めてです。

 

(次回は518日(火)午後6時更新予定です)