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「サッカークラブ×移住×農業」に挑んだ『南紀オレンジサンライズFC』の1年

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2月4日(土)田辺市の闘鶏神社で必勝祈願を行った『南紀オレンジサンライズFC』

和歌山県紀南地方をホームグラウンドに活動するサッカークラブ『南紀オレンジサンライズFC』が社会人リーグ初年度となる2022年シーズンを終えた。「サッカークラブ×移住×農業」というユニークなコンセプトを掲げて設立された個性派サッカークラブの1年間と、これからの展望について同FC代表の森永純平さんに伺った。
(取材は20231月に行いました)

和歌山県南部に位置する上富田町は、スポーツを軸にしたまちづくりを展開していることで知られている。毎年2月には「紀州口熊野マラソン」が開催(現在はコロナ禍によりオンラインにて開催)。県内唯一のフルマラソン部門を持つ大会ということで、全国各地からランナーが集結し、コースとなる熊野古道中辺路を疾走する。

町のスポーツ振興の拠点となっているのが「上富田町スポーツセンター」だ。野球場や多目的グラウンド、テニスコートなどがあり、全国各地のスポーツチームの合宿場所としても利用されている。『南紀オレンジサンライズFC』は、そんなスポーツの町のシンボリックな存在として、同センターを練習拠点に2022年より活動をスタート。同年4月より参入した和歌山県社会人3部リーグを10勝負けなしで制覇。今年より2部リーグへと昇格する。

ここで日本のサッカーリーグの仕組みを説明しておこう。ピラミッドの頂点には男子サッカーのトップリーグである日本プロサッカーリーグ(J1・J2J3)、いわゆるJリーグが存在する。その下部から順番に、アマチュアトップリーグの日本フットボールリーグ(JFL)、9地域サッカーリーグ(北海道・東北社会人・関東・北信越・東海社会人・関西・中国・四国・九州)、そして最下部に各都道府県のリーグが存在し、それぞれリーグ終了後に入れ替えがある。南紀オレンジサンライズFCは、都道府県リーグに所属している。

南紀オレンジサンライズFC代表の森永さんは京都出身。学生時代はサッカーに打ち込み、卒業後はスポーツビジネスの世界に身を投じた。地域の野球チームやサッカーチームのスタッフとしてチームを支え続けた経験で感じたのは、経営・運営の難しさだった。チームの勝利だけでは、応援やサポートを得ることは困難だと身に染みた。それでもチャレンジしてみたいという思いが強く、独自にサッカークラブ運営の道を歩むことを決め、2020年から準備に取り掛かる。

「サッカー以外でクラブとして価値を生み出すにはどうすればよいか、まずはそこから考えました。サッカー選手は移籍が多いので、生まれ故郷を出ることに対して抵抗がありません。そういう選手たちを集めて、地域の課題解決に取り組むチームを作りたいというアイディアから、『移住』をテーマの1つに設定しました。サッカー引退後も定住するのがベストですが、その第一歩としての移住です」。

「当初は和歌山を活動拠点にするとは決めていませんでした。あらゆる地域を調べるなかで、紀南地方が農業の盛んな地域と知り、そこの人手不足や後継者不足といった課題解決に取り組めればと思い、移住にプラスして『農業』もテーマに加えました」。

こうして「サッカークラブ×移住×農業」というコンセプトが決定し、20212月より活動を開始。まずは選手の受け入れ先を探し始めた。まずは企業サイトからアプローチし、クラブのコンセプトに興味を持ってくれた企業には森永さんが一軒一軒足を運んだ。訪問先で別の企業を紹介されることもあり、地縁のなかった森永さんにはありがたかった。

チーム初年度となる2022年には全国から21名の選手が集結。大学卒業後もサッカーを続けたい選手や、一度は競技から離れたブランクのある選手など、過去の実績はさまざまだが、目的意識のある選手が揃った。

練習は週に35回。火曜・金曜の午前中と水曜の夜間、土曜、日曜のどちらかが練習日となる。選手たちは練習が終わると、急いで仕事先へと向かう。サッカーを優先としたスケジュールは、受け入れ先の企業や団体に了承されている。

入団した選手の受け入れ先は、梅農家を中心とした農家、農産物加工会社が半分を占め、教員や介護などの資格を持つ選手はそれらを活かせる職に就いた。地域には専門学校や大学がないため、高校を卒業すると若い人たちは地元を巣立ってしまう。そのため選手たちには農業に限らず、多方面の企業からニーズがある。

受け入れ先農家での高所作業

「コンセプトとして農業をテーマにしながらも、短期や繁忙期での雇用が中心でした。でもそこはあらゆる農家さんを手伝いに伺えたメリットでもありました。でも安定したクラブ経営を行うには、自分たちで畑を持ち、農業で売り上げを確保しないと、将来的には厳しいとわかりました」。

地域イベントでブースを出展し、オリジナルグッズを販売

選手たちは、地域イベントへの参加やコミュニティラジオ出演といった活動を通して、チームのPRに励んでいる。SNSでの発信も盛んで、チームや自分たちの認知度を高めようと取り組んでいる。

「認知度はまだまだ低いですが、選手の職場の方々はじめ、地域の方々が観戦に訪れてくれました。和歌山に全く縁がなかった状態からスタートしましたが、初年度にしては、たくさんの応援をいただき感謝しています」。

今後の目標は、まずは社会人2部リーグを制し、1部に昇格すること。早い段階で関西サッカーリーグや天皇杯本戦に出場し、Jリーグの所属チームと対等に試合ができるようなチーム作りをめざす。

「昨年リーグ優勝を果たしましたが、カップ戦では思うような結果は得られなかった。社会人1部のチームと対戦しても勝てるよう、さらなるレベルアップを図りたい」と意気込む。

一方で経営面の目標は、将来的にクラブとして農業に取り組み、独自に売り上げを上げること。チームの所属選手が引退後に農家へと転身できるようなシステム構築をめざし、地域のサッカークラブとして長く継続できるよう、一歩ずつ歩んでいく。

「地域の子どもたちが在籍できる育成チームを設立し、引退した選手がコーチ兼農業をして永住できるのが理想です。紀南地方は野球が盛んですが、サッカーにも興味を持ってもらい、1人でも多くの方々に試合を見に来てもらえるよう、魅力的なサッカークラブを作り上げたい。もちろん地域貢献活動も積極的に行い、地域の活性化をめざしていきますので、応援よろしくお願いします」と森永さんは力強く語る。

南紀オレンジサンライズFCの今後の試合予定や活動については、公式ホームページやツイッター、インスタグラムから随時発信されるので、そちらをチェックのこと。和歌山県社会人リーグ戦は20234月から開幕する。グラウンドはさることながら、地域で活動する選手たちをこれからも応援していきたい。

南紀オレンジサンライズFC
https://nankifc.com/