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『他人(ひと)の本棚を見てみたい。』OLD FACTORY BOOKS店主・助野彰昭さん(前編)

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本棚をのぞくと、その人の成り立ちが見えてくる――。

初回は海南市黒江の旧田島うるし工場で古書店『OLD FACTORY BOOKS』を営む助野彰昭(すけのてるあき)さん。彼の人生に影響を与えた本とは。

 

『菊池君の本屋~ヴィレッジヴァンガード物語』(永江 朗 著/アルメディア)

助野
ヴィレッジヴァンガード社長の菊池さんが、ヴィレッジヴァンガードを開店したきっかけや思い、どういうポリシーで経営しているかといったことが書かれた本です。そもそも菊池さんの生き方=ヴィレッジヴァンガード。彼の哲学が網羅されています。ヴィレッジヴァンガードに影響を受けた僕としては、好きにならざるを得ないです(笑)



僕は19歳から28歳まで京都で暮らしていました。自転車で3分の距離のところにヴィレッジヴァンガードがあり、買う買わないに関係なく、自分の居場所のように通っていました。たぶん人生で最も多く本を買った書店です。

ヴィレッジヴァンガードは本屋さんとしてはちょっと認めがたい、正統派の本屋さんではありません。文学好きなど生粋の本好きならちょっと物足りないような雑貨に近いような本が多くて、でも逆に僕はそういう本がすごい好みでした。



当時、京都には多くの本屋さんがありましたが、ヴィレッジヴァンガードによく通いました。例えば線路の矢印の向きのように、ヴィレッジヴァンガードで得たものにより、人生が変わって行きました。学生時代に好きだった子と一緒に行ったり、ほろ苦い思い出があったり、ヴィレッジヴァンガードが自分の中でとても大切な存在ですし、今もそうです。

もし昔のヴィレッジヴァンガードが好きなお客さんがうちの本屋に来て、僕が「ヴィレッジヴァンガードに影響を受けています」と話すと、「そうでしょうね」ってたぶん言われます(笑)

助野さんがOLD FACTORY BOOKSを開いたのは2020年7月3日。奥さまである絵本作家のすけのあずささんと、旧田島うるし工場内にあるカフェ「そうげん堂」店主の中田耕平さんの縁で2019年に同工場を訪れた時、建物に魅了された。もともとバックパッカーとして海外各国を訪れていた助野さんは、建物が醸し出す雰囲気を異国のように感じ、すっかり心をつかまれたという。



助野
自分は普通の総合大学に在籍し友人もいましたが、芸大生だった妻の周りにいる連中と一緒に過ごす方が、居心地が良かった。それが青春の思い出として自分の中に今も息づいています。

旧田島うるし工場は5人で借りているのですが、そのメンバーや、ここに出入りしている人たちにも学生時代と同じような居心地の良さを感じ、この場所で何かやりたいなと思ったのが、書店を開いたきっかけです。

でも書店経営をしたかったわけではなく、この建物で何らかの自己表現をしたいという思いがありました。そこでまずはそうげん堂の一角をお借りして、本の委託販売からスタートしました。

委託販売を始めて半年後、本の入れ替え時にお客さんと出くわすことがありました。本を読み耽ってくれたり、買ってくれたり、手に取った本にまつわるエピソードを話してくれた方もいました。そんな時、今まで手探りだった自分のやりたいことに手応えを感じたんです。そこでたまたま空いていた2階の物置小屋で本屋を開業することにしました。



もともと本好きで、小説家になりたかった時期もありました。両親とも学校の先生で本が大好き。ちなみに兄は漫画家です。良く覚えているのが、中学生や高校生の頃、難波のジュンク堂書店に家族で行っていたんですが、1万円札を渡され「好きな本を買ってこい」と解散し、2時間後に集合ということをしていました。

そんな家庭で育ったので、本好きの素養はあったんでしょうね。もう、自分の全てを剥ぎ取ったら、本しか出てこなかったと思います。

(次回に続きます)


OLD FACTORY BOOKS
海南市船尾166 旧田島うるし工場内
tel.09058919092



guesthouse GOOD DAY
海南市日方1519-3 令和荘201
https://www.airbnb.com/I/UNWmRHHc

JR海南駅から徒歩5分。レトロ喫茶の真上にあるゲストハウス。本は「世界を旅する」をテーマに選書している。