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世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」登録20周年記念特別展『仙境 南画の聖地、ここにあり』/和歌山県立近代美術館

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富岡鉄斎《寿山福海図》1899年 清荒神清澄寺 鉄斎美術館

(以下、ニュースリリースを転載)

和歌山から広がる南画の世界 3会場で約100点を紹介

南画とは、中国絵画に影響を受けて江戸時代に成立した、主に山水や花鳥を描く絵画です。中国の高官が余技としてたしなんだ文人画や、中国江南地方の温暖な風景を柔らかな筆づかいでとらえた南宗画を起源とするもので、江戸中期から人気を博したのち、明治期以降の美術界でも独自の展開をみせました。山と水に恵まれた和歌山は、しばしば中国古典に登場する「仙境」と重ねられ、江戸時代から文人たちの詩や絵画の主題となってきました。そして、近代においても、数多くの南画家が和歌山をめぐって作品を描いており、和歌山はいわば南画の「聖地」でした。

世界遺産登録20周年を記念する本展覧会は、和歌山県内の3会場で同時開催し、特に和歌山および京都、大阪を中心とする関西に注目して、近代日本において南画と向き合った画家による優品の数々を紹介します。和歌山県立近代美術館では、江戸期の和歌山、そして明治から戦前期までの関西を中心とする南画の展開をたどります。田辺市立美術館では、和歌山ゆかりの南画家を紹介し、熊野古道なかへち美術館(田辺市立美術館分館)では、和歌山の風景を描いた作品を展示します。この機会に、和歌山の豊かな自然を見つめ直すとともに、それらに通じる南画の清らかな世界観をぜひご覧ください。

1部 近代の南画、関西にあり 会場:和歌山県立近代美術館

1部では、江戸期の和歌山を代表する文人画家の紹介にはじまり、主に明治から戦中期までにおける、京都、大阪や和歌山を中心とする関西の近代南画の動向を探ります。中国から文人画や南宗画がもたらされた江戸時代、和歌山は日本の文人画の祖ともいわれる祇園南海をはじめ、桑山玉洲、野呂介石ら「紀州三大文人画家」を輩出しました。はじめに、主に田辺市立美術館の文人画コレクションから、彼らの代表作を紹介します。

南画は明治期に全国的な広がりをみせますが、固定化したスタイルなどがしばしば批判の的となりました。しかし、その頃の関西では京都府画学校や浪華画学校のほか、日本南画協会を通じて、南画家たちが盛んに活動しました。大正期に入ると、近代西洋絵画の影響を受けて「新南画」が流行し、関西でも京都市立絵画専門学校で学んだ若手を中心に盛り上がりを見せます。一方、伝統的な技法や精神を重んじながら、南画の革新を目指す団体として、京都で日本南画院が結成され、やがて全国にまで活動範囲を拡げていきました。

ここでは、学校教育や、美術団体、展覧会といった近代的な制度とも関連しながら、南画の世界に生じたダイナミズムを、関西を代表する作家たちの優品の数々によってご紹介します。

(第2部、第3部の情報はページ下部をご覧ください)


仙境 南画の聖地、ここにあり

会場  和歌山県立近代美術館 1階展示室A
会期  2024105日(土)~1124日(日)
開館時間  930分~17時(入場は1630分まで)

休館日  月曜(祝休日の1014日、114日は開館)、1015日(火)、115日(火)

観覧料  一般800640)円、大学生500400)円 ※( )内は20 名以上の団体料金 ※高校生以下、65 歳以上、障害者、県内に在学中の外国人留学生は無料

106日(日)は無料入館日 ※1026日(土)、1123日(土)は「紀陽文化財団の日」として大学生無料 ※1122日(金)は「和歌山県ふるさと誕生日」により無料


関連事業(和歌山県立近代美術館)

近代南画をめぐるトークイベント

日時 114日(月・休)14時~16時(予定)
場所 和歌山県立近代美術館 2階ホール
講師 橋爪節也(大阪大学名誉教授)、池田方彩(公益財団法人天門美術館館長)
定員 80名程度 *聴講無料、1330分開場、先着順

フロアレクチャー(担当学芸員による展示解説)

日時 1013日(日)、1110日(日)、1124日(日) 各日14時~15
場所 1階展示室A *要観覧券

スライドレクチャー(担当学芸員による展示解説)

日時 1026日(土) 14時~1530
場所 2階ホール
定員 80名程度 *聴講無料、1330分開場、先着順

都合により内容を変更する場合があります。各イベントの詳細や参加申込等についてはウェブサイト等でお知らせいたします。

ワークショップ「粘土で山水画をつくろう わかやま編」

実施・運営:NPO和歌山芸術文化支援協会[wacss
日時 1019日(土)13時~15時(予定)
場所 和歌山県立近代美術館
講師 松平莉奈(画家)
対象 小学生以上 *小学校低学年は保護者の同伴が必要です。
定員 15名程度 *要事前申込。定員になり次第、締め切ります。
参加費 500円 *保険および材料費として

910日(火)10時から電話(和歌山県立近代美術館:0734368690)及びウェブサイトの申込フォームにて予約の受付を開始します。

こども美術館部(小学生を対象とした作品鑑賞会)

テーマ:なんかのスイッチ、ここにあり
日時 1026日(土)、27日(日)11時から1時間程度 *両日同内容
場所 1階展示室A
人数 6名程度 *要予約 1012日(土)930分からウェブサイトにて受付を開始します。

和歌山県立近代美術館
和歌山市吹上1-4-14
tel.073-436-8690
https://www.momaw.jp


(第2部、第3部の情報について)
2部 近代の南画家、和歌山にあり 会場:田辺市立美術館

近代の南画界において、和歌山は多くの画家に影響を与え、独自の文化を育みました。第2部では、和歌山と深い関わりのある画家たちの多彩な作品を紹介します。元武士や学者、商人などが、本業の傍ら余技として描いた明治期の南画は、江戸時代から続く文人的性格が認められます。和歌山は、こうした文人たちが理想とする「聖地」として位置付けられ、多くの画家が清遊しました。大正期頃になると、和歌山でも伝統的な南画を継承しつつ、西洋絵画などをとり入れ、独自の表現を確立した画家たちが多くあらわれ、県内だけでなく中央の画壇でも活躍しました。また、昭和期、特に戦中・戦後の混乱期には、現代における「南画」の在り方が模索され、そうした中で描かれた和歌山の風景作品には、この地に対する画家たちの深い洞察が感じられます。

3部 南画の風景、和歌山にあり 会場:熊野古道なかへち美術館

江戸時代の文人画家の野呂介石は「山水画家は須く南紀の山水を見よ。南紀を見ずして山水を語るなと喝破した」と、大正から昭和期に活躍した南画家の矢野橋村が伝えています。江戸時代から日本の文人たちは中国の山水世界を求めて、和歌山をはじめ日本各地を旅し、現地での感興を詩や絵画に託しました。近代においても、文人たちが遊んだ「仙境」である和歌山にあこがれ、数多くの画家がこの地を訪れています。那智の雄大な滝や、吉野に連なる熊野の山々、熊野に臨む奇勝絶景の海岸などを目の当たりにした画家たちは、思い思いにその風景を描き残しました。ここでは、南画を中心に、描かれた和歌山・熊野とそれに連なる海と山の風景を巡ります。