Vol.3 「酒と音楽と高垣さん」

3-2「酒のことが好き」という想いは、言葉の端々と言わず、言動のあちこちからじわりじわりとにじみ出す(もちろんアルコール臭ではなく!)。造りの時期には寝食を忘れるというほどの想いの強さには、思わず「感服」という言葉が浮かぶ。
焦がれる相手は酒麹という生き物。昼夜を問わず、成長し続ける、ともすれば休みは得られない時期もあり、まるで生まれたばかりの子どものようでもある。「なんでこんなしんどい事を…」と弱音が漏れることも時にはあるが、飲んだ人から「おいしかったよ」と感想を聞くと、それだけで「また頑張ろう!」と発起する。仕事への愛情がなければこうはならないだろう。

そして話を聞くうちに、ちょっと意外な、もう一つの「好きなもの」に話が及んだ。それは“クラシック音楽”。大学でオーケストラに入団したのをきっかけにビオラを始め、大学時代は勉強よりも音楽にのめり込んでいたと言っても過言ではない生活を送った。それまでどちらかというと音楽は苦手としていたのだが、内心にあった興味がここに来て噴き出した。ピアノやギターといった王道の楽器ではなく、ビオラを選んだのは「楽器は幼い頃から英才教育を受けていないとできないだろう」と考えていた高垣さんに、入団の勧誘で「弦楽器ならば大抵が初心者だ」と言った先輩の言葉から。当たらじとも遠からず、いつしか学生オケでは主席を務めるほどの腕前になった。自宅には今もマイビオラが置かれているが、最近はめっきりご無沙汰しているため、1度弾いたら弦が切れてしまった。張りなおし、いつか子どもとデュオを組むことがささやかな夢だという。
酒の味にはまったのも、同じく学生時代。今ではすっかり「酒を飲むのは趣味と実益を兼ねて(笑)」。高垣さんいわく、クラシック音楽とお酒には共通点が多々あるのだそう。突き詰めればキリがない点もそうだし、音符の組み立てと酒造りは似ているのだとか。
なかでもビオラとは特に似通った部分を感じている。「陰の存在だけど、ビオラがないと、オーケストレーションの、しまりがないと言うか。味わいがないじゃないですか。酒造りも、お酒というさまざまな味わいや香りのある中で、私がやっていることは、酵母や菌の手助けをする陰の存在、いわば“脇役”ですよね…」。
音楽とお酒、似て非なるこの2つには、高垣さんを熱くさせる何か不思議な波長のようなものが流れているのだろうか。ともあれ、お酒造りの名脇役たる所以は、音楽の世界で名脇役を務めることでも磨かれてきたに違いない。